福永恵美（ふくながめぐみ）オフィシャルHP

ふくながめぐみは、脱色した白き花のオブジェで知られるアーティストである。

美しい色彩に彩られた花を修飾する言葉は数多くある。また花は、枯れゆく運命にあることから古来様々な人生 譚にうたわれてきた。ふくながの白い花は、これら教養、格言、記号としての言葉が付与される以前の、いわば言葉によって意味づけられる前の純白な花を希求したものと解釈されよ う。

それゆえ筆者は、生きた花に接する際はひとまず意味や解釈を横に置き、花と対話しながら自分なりの言葉を絞り出そうと努めてきた 。深い言葉は、自らの体験を通してこそ生み出されると考えるからである。

この小さき花との対話は人生を振 り返る機会へと広がっていく。またそれは夜空に輝く星を見上げることと等しい行為ともいえよう。 どちらも自分が小さき存在であることや、世界との結びつきを確認することにつながるからだ。花は、人の意識とこの世の美しさを映し出す鏡である。

（きたがわ・ともあき　碧南市藤井達吉現代美術館特任学芸員）